新生活の始まり:部屋の整理と発見

和弥と華菜の二人は、道案内を聞きながら歩くうちに、自分たちがこれから住むことになる部屋の前に立っていた。

「広い…」と華菜が部屋に足を踏み入れ、呟く。

「そうだね…」と和弥が応じる。

彼らに割り当てられたのは、広さ10畳の一部屋だった。二人は船から持ってきたバックを広げると、ふと薫のバックがないことに気づいた。

その瞬間、部屋のインターホンが鳴り響く。華菜が玄関に出ると、彼らと同い年くらいの男の子が、背中にしょった荷物を放り出し、逃げるように走り去っていくのを目撃した。彼女は驚きながらその様子を見つめ、彼が置いていったバックを手に部屋に戻り、ドアを閉めた。

部屋の中では、和弥が二人のバックから荷物を全て取り出し、ぼんやりとしていた。華菜は受け取ったバックを散らかった部屋の隅に置き、二人は整理を始める。

ふと、彼女が部屋の蛇腹の扉に手をかけると、そこはクローゼットだった。右側には二つのタンスが並んでいる。

「和弥くん…」と彼女が呼ぶと、和弥は振り向き、何かを思いついたように、床に散らばった洋服を拾い上げ、タンスにしまう。どうやら、彼は右側のタンスを使うことに決めたようだ。華菜もそれに習い、左側のタンスに自分の服をしまい始める。

数十分もせず、二人は服をしまい終わると、クローゼットの残りのスペースにまだ残っている物を整理した。その作業も約10分で終え、部屋の入り口から右奥にある扉を開ける。

そこは脱衣所で、手前と奥の方に異なるデザインの扉があった。自然と二手に分かれた彼らは、華菜が奥の扉を開けると、バスタブ付きの浴室が現れ、和弥が入った部屋はトイレだった。

二人は扉を閉め、脱衣所から出ると、入り口側から見て右手前のドアを開けた。そこにはキッチンが広がっていた。

ふと、廊下側にある冷蔵庫を開けると、食品がぎっしり詰まっていた。冷蔵庫の下部分を開けると冷凍庫があり、中には氷とアイスクリームが入っていた。二人は冷蔵庫を閉め、奥にある食器をしまえる棚と電子レンジを確認した。そして、浴室側にはシンクや換気扇も備わっていた。

キッチンの確認を終えた二人は部屋を出て、ドアをしっかりと閉めた。再びリビングに戻ると、この部屋にはベッドがないことに気づく。しかし、玄関の壁の間に出っ張った部分に目を向けると、そこにはベッドがあった。

お互いに見落としていたことに気づき、笑いがこぼれる。笑いが収まった後、二人はそのベッドに飛び乗った。ふかふかのベッドは心地よく、二人の顔には自然と笑みが広がった。