不安と葛藤が織りなす物語

薫と、華菜と和弥の三人を乗せた車は、フェリーに乗っていた。

ふと、華菜の目が覚めると、周りを見渡した。

「ここは、どこ…?」

ふと、華菜の声で、和弥も目を覚ます。

「おはよう…」

華菜は、誰からの返事もなく、ふと運転席を見ると、薫が寝静まっていた。

華菜は、一瞬考えてから、薫を起こした。

「…おはよう…、華菜ちゃん…、どうしたの…?」

「ここは、どこ?」

「ここはね…、海の上だよ。」

「うみ?」

「そうだよ、この船は、私がチャーターした船だよ。」

「チャーター?」

「そう、この船は借り物なの。ほら、一緒に降りましょ。」

華菜は、薫に言われて、車を降りる。

いつの間にか、外には和弥が一人で、船の端っこに立っていた。

華菜に何となく、不安が襲い掛かり、無意識のうちに、彼のそばに駆け寄っていた。

「どうしたの?」

「さっき、ねてたときにみちゃったんだ…」

「なにを…」

「とても、とても、わるいゆめ…」

「わるいゆめ?」

「この『くに』は…、『くに』みたいにみえるけど『くに』ではない…、そうぼくたちの…」

「どういうこと…?」

彼が続きを言おうとすると、彼の口を誰かがふさいだ。

彼の後ろには、薫が立っていた。

「ダメ、その続きを言っちゃダメ…」

すると、彼が大きく手を振り払い、その力に思わず、薫の手が離れて、彼女はこけてしまう。

それを見た、華菜は、思わず、後ずさりした。

なんだか、いつもの和弥ではないように、感じたからだ。

「華菜ちゃん…」

彼はそう呟くと、華菜の手を強く引き、彼女はバランスを崩して床に倒れ込んだ。

「和弥くん…、いたい…。」

「華菜ちゃん…」

彼女は、一瞬、彼が普段の表情に戻ったように見えた。

「和弥くん…、いかないで…」

彼女は、涙目になっていった。

すると、彼は、彼女の頬にそっとキスをすると、船の操舵室に入った。

すかさず、薫が止めに向かう。

だが、操舵室の手前で、華菜が腕を広げて止めた。

「やめて…」

だが、彼女の言葉が届かなかったのか、薫は、無理やり進もうとする。

次の瞬間、何かがぶつかる音とともに、薫はその場に崩れ落ちた。

華菜は、薫が気絶したのを確認すると、操舵室に入っていった。