日常の中の小さな奇跡
華菜と和弥の二人は、浴室を出ると脱衣所で無造作に置かれていたイヤホン型の機械を耳に入れ、そのままベッドに横たわった。
暗いベッドの上で、お互いの存在を手で確かめ合うと、二人の耳から伝わる心地よい感触が全身を包み込み、自然と身を任せて抱き合った。
そのまま、二人は静かに夢の世界へと誘われていった。
二人は同時に目を覚まし、自分たちが互いの体を寄せ合ったままお漏らしをした感覚を共有した。その瞬間、自然に唇が動き、二人はキスを交わした。
華菜は、おでこを和弥にくっつけて笑いかけた。和弥もその笑顔に誘われるように、思わず笑みを返す。二人は、この瞬間が永遠に続くことを何となく感じ取った。
すると、二人のおなかから音が鳴り、空腹を実感する。ベッドから降りて、替えの服をタンスから取り出し、キッチンに入ると、冷蔵庫を開けた。そこには卵と醤油が目に飛び込んできた。卵を二つ取って、すでによそられたご飯の上に乗せ、醤油をかける。自然な手つきで箸を取り出し、リビングで食べ始めた。
二人は、浜辺以来の食事を勢いよく平らげ、「おいしいね…」「そうだね…」と笑い合った。笑顔が絶えないまま、食器をシンクに入れ、洗剤を垂らして洗い、その後ふきんの上にのせて乾かした。
リビングでくつろいでいると、ちょうどその時、インターホンが鳴った。和弥が玄関のドアを開けると、見知らぬ男性が立っていた。
「野平和弥くんだね…」男性の言葉に、和弥は初めて自分の苗字を知った。
「どうしたんですか?」彼は尋ねる。
「和弥くんには、今日からお願いしたいことがあるんだ。」そう言いながら、男性は背負ったバッグからタブレットを取り出し、何かを見せた。「君は、この国が国ではないことを知っているかな?」
「知ってますけど…」和弥は落ち着いた声で応じた。
「もともと、この島を含めた北方領土、北海道、本州、四国、そして各島々は、日本という立派な国があったんだよ。」男性は話を続ける。「これには長い話がある。」
そう言って、彼は和弥を部屋の外へ連れ出した。その様子を後ろから見守っていた華菜は、彼についていこうとしたところ、横から来た誰かとぶつかってしまった。
振り向くと、そこには女性が立っていた。「今晩になったら、また会えますから、私についてきてくれませんか?」女性は優しい声でそう言い、自然と華菜はうなずき、彼女の後についていくことになった。