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静かな船旅の思い出
華菜と和弥の二人は、静かにお互いを見つめ合っていた。
その時、華菜が突然笑い出し、和弥もそれに釣られて微笑んだ。
二人は笑いあっているうちに、ふとした瞬間に心地よい眠気が訪れ、そのまま夢の世界へと誘われていった。
二人が再び目を覚ますと、ちょうど船が動き出したところだった。
「お客様にお知らせいたします。本船は再び動き始めました。現在の天気は晴天で、広々とした青空が広がっています。次の停泊地である北大東島には、本日中に到着する見込みです。また、次の島に停泊いたしますと、本船は船員の休憩を実施するため、北大東島を出発するのは明朝となる予定です。予めご了承ください。」
船内放送が鳴りやむと、とんとんと二人がいる船室のドアをたたく音が聞こえた。
「はい、」
華菜がドアを開ける。
そこに立っていたのは薫だった。
「おはよう、華菜ちゃんと和弥くん。船旅には慣れましたか?」
「うん!」
華菜が元気よく答える。
「ところで、華菜ちゃんたちは、子宝島を出るときに、どこで降りるか聞いたの?」
「ううん…」和弥が華菜の後ろからそう答える。
「そうか…、確か華菜ちゃんたちは糸満で降りると聞いていたんだけどね…」
薫は一瞬考え込み、二人に一緒に船内を回らないかと尋ねた。
だが、華菜は即答で「いいや。」と答える。
「そうか…、じゃあ、私は戻るね。」
そう告げると、薫はまた消えてしまった。
「ねぇ、これからどうするの…」
和弥が華菜に少し不安げに尋ねる。
「お絵かきしよう、和弥くん。この船を降りるまで。」
「でも…」
彼が何かを言おうとすると、彼女はすかさず近づき、彼にキスをして気持ちを封じ込めた。
「だいじょうぶ、私がそばにいるから。」
「そうだね…」
彼女の行動に戸惑った彼だったが、納得したようにスケッチブックを再び開いた。