心の絵を描く二人
華菜は、旅客船を見回し、目を凝らしたが、和弥が言っていたおもちゃは見つからなかった。そのため、仕方なく色鉛筆とスケッチブックを抱え、船室に戻ることにした。
彼女が戻った瞬間、和弥の視線が彼女を捉え、まっすぐこちらを見つめていた。彼の目には、一瞬の期待が浮かんでいた。
「おもちゃ、なかったよ…」
華菜は、手に持っている色鉛筆とスケッチブックを差し出しながらそう告げた。
「これを持ってきたけど…」
和弥の表情は一瞬、失望に染まったが、そのすぐ後には、彼の顔が輝き始めた。
「ありがとう。」
その言葉が彼女の心に暖かい感情を灯した。和弥は考え込むようにペンを走らせ、何かを描き始めた。華菜が動こうとすると、彼が「うごかないで」と真剣に言い、彼女はその場にじっと座り込んだ。
「何を書いてるの?」
「秘密だよ…」
だが、心の奥底で彼女は、彼が描いているのは自分自身の姿なのだと感じ取っていた。
数時間が静かに流れる中、和弥が「できた」と言って、スケッチブックを優しく彼女に見せた。彼女の目の前に現れた絵は、見事に鮮やかであり、まるで彼がプロのアーティストのようにその才能を輝かせていた。
「どうしたの?」
彼は色鉛筆とスケッチブックを華菜に渡し、彼女の心は高鳴った。
「…ぼくのこと…描いて…」
照れくさそうに彼がそう言うと、華菜は彼が描いた絵の隣に、心を込めて彼の姿を描いた。
「できたよ…」
その瞬間、彼女は彼に絵を渡し、和弥の顔に広がる笑みは、まるで心の底から感謝の気持ちが溢れ出しているかのようだった。
「和弥くん…」
「なに…」
その時、彼女の心に渦巻く感情が貫かれ、彼女の体が自然に動いた。思わず彼にキスをしてしまった。すると和弥もその瞬間を感じ取り、優しくキスを返しながら「ぼくも…」と、頬を染めて答えた。